封筒を開けると、新オーナーからの挨拶状、いや、要求だけが書かれた紙が1枚、さらに封筒に入れられ、ノリで封をされた状態で入っていた。つまり、不動産屋はこの手紙の内容を知らない。
いまどきクセの強い手書きで書かれた手紙を読むと、①新オーナーになりました ②家賃相場と照らし合わせると不釣り合いなので、家賃を3倍にしたいです ③根拠はこれです(近隣の店舗物件の紙のプリントアウトの束)とある。
いまのお店は2005年に契約したものだ。半年間物件を探して、もう諦めかけていたときにポロっと出てきたもの。当時、代々木の友人の会社に間借りしていて、情報が出た瞬間に現地に見に行ったのだが、ただの更地で驚いた記憶がある。
不動産屋に申し込んだときにそのことを伝えると、改めて物件情報がFAX(当時はFAXでした)で送られてきて、「借主決定後建築します」と手書きで書かれていた。
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| ▲送られてきたFAX(当時モノ)。2005年12月15日と日付が入っていて、右下には建築予定と手書きで書かれている。物持ちいいでしょ。 |
会員制ブログだし、もう手放す物件なので書いちゃいますけど、16SHOTSの家賃は15万円(税別)でした。あの立地で新築、超狭いけど破格です。25万ぐらいがおそらく適正。坪単価でいうと1.5万、新宿エリアだと築30年ぐらいの物件の値段です。
どうしてそんなに安かったのか? と聞くと、この物件の土地(5坪)は、隣の5坪と合わせて、1軒の民家が建っていたそうです。おばあさんがひとりでお住まいで、亡くなられてしまって、売りに出たんだそうです。
うちの初代オーナーは、近所に本社があるトシン電機という昭和22年創業、資本金8億、売上高439億の大きな会社の会長でした。どうも、その会長が、お戯れにお買いあそばされた物件のようで、契約が進んだり、入居したあとにいろいろおかしなところが出てきました。
まず、この住所、所在地「新宿2-3-8」とこの書類にも書かれているので、建築中ではありますが、そう書いてあるから疑わずに、本店移転と、それから、印刷物。住所のハンコもそうですし、名刺、封筒など一式を用意しました。
新築のおうちを建てることはみなさんそうそうないと思うんですけど、新築のおうちを建てると、しばらくしてから郵便ポストに、地番表示のプレートが投函されるのです。住居番号表示板。
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| ▲2006年頭、建築をはじめたころの16SHOTS。カメラ が当時のケータイなので画素数。 |
この物件、「借主決定後建築します」なので、実は階段の位置とか、排水溝の位置とか、すべてなぜか僕が決めてるんです。工務店さんに決めて、と言われたもので。
で、カウンターをドーンと置いて、それを避けたところにドアがあって、いまテーブル筐体を置いてあるところがあるわけですが、あのドアの位置には意味があって、「いつかピンボールを入れられるようにしよう」と、まっすぐ入れられる場所にドアを作ったのです。
その結果、住所が2-3-9になったわけですな。
区役所に電話すればいいですか? と不動産屋に聞いたところ、「それはやめてください」と。
やめてくださいとは。
どうも、登記をしていない物件なんだそうで……脱税の片棒的なこと……それで安いのかな……みたいな流れの模様です。
脱税話はもうちょっと続きます。まず、そもそも、この物件、新宿の物件なのに、取り扱ってる不動産屋が中央林間にあります。契約のために3~4回足を運びました。ロマンスカーにも乗ったし、自分の車でも行きました(16号の渋滞が半端ないので1回でやめましたが)。遠いです。
工務店はそこの子飼いの工務店さんで、引き渡し時に「どこか壊れたなんでも言って! 直すから!」と言われました。おお、頼もしい。
5年ぐらいしたときに、換気扇のダクトが壊れたので、電話をしたところ、「あの物件ね~、うちもう触れなくなっちゃったんだよね~」といって断られました。どういうこと。
さらに数年して、不動産屋に確認事項が出てきたので、電話をすると、「アロハ不動産です~」と言われます。ン~? キミんとこはトシン電機がやってる「トシン不動産」じゃなかったかね? と確認すると、電話口の女性はしどろもどろ。
どうやら、脱税でロンダリングするために、不動産会社ごと作ってツブしているようなのです。お金持ちのすることはおっかない……。
たしかに登記簿って、2回ぐらい更新すると前の履歴、消えるもんな……。と納得しつつ、更新手続きをした記憶があります。
さて、そんな物件ですが、ある日、初代オーナーが亡くなられてしまいます。自動的に会社を継いだ二代目に所有権もうつったのですが、この人はこの物件にまったく興味がなかったのか、そもそも投資物件として買ったのか、数年で知らない不動産屋に売却してしまいます。思えば、このあたりから、この物件にケチが付いたのでしょう。
この不動産屋は新宿1丁目に事務所があり、交代時に社長さん(お若い方でした)が覆面で飲みに来たほどだったのですが、3~4年経過したところで、今回の売却話になります。突如転売してしまうのです。コロナが始まった時期と重なるので、現金が必要だったのかもしれません。理由はわかりませんが、とにかく、14年間平和だったこの物件は、クソ新オーナーに売却されてしまったのでした。



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